教会だより
「ただ主に仕えよ」 ルカによる福音書4章5-8節(5/18説教)
5節に「悪魔はイエスを高く引き上げ、一瞬のうちに世界のすべての国々を見せた。そして悪魔は言った。『この国々の一切の権力と繁栄とを与えよう。~もしわたしを拝むなら、みんなあなたのものになる。』」とあります。この世の「栄光のメシア」として生きる誘惑がサタンを通して主イエスに示されたのです。
このサタンの誘惑の典型的な聖書の事例がヨハネ6章1節以下に記されています。主イエスが五つのパンと二匹の魚で五千人以上の人々を養う給食の奇跡を行った時、人々がこの奇跡を見て「まさにこの人こそ、世に来られる預言者である」と言って、主イエスをこの世の「王」にしようと画策し始めたので、主イエスは人々を避けて「ひとりでまた山に退かれた」と記されています。
確かにそのような力ある人がこの世の指導者、王になってくれたら、私たちはどんなに助かるかと思うのです。そういう力を用いるなら、主イエスを信じる信仰はいとも容易いものとなり、全ての人が主イエスを信じる信仰者になることができるのではないかと思うのです。
しかし、主イエスはその道をとらないのです。なぜなら、力によって人の魂を導くことはできないからです。力によってうわべだけの従順は作ることができても、心からの従順、心からの悔い改めは不可能です。そして、心からの神への従順、真実の悔い改めの中にこそ聖霊が働き、主イエスの霊の御支配の中に私たちの魂は生かされることができるからです。
それ故に主イエスは、力による支配ではなく、神の霊の働きによって人の魂を救う道を選ばれたのです。それ故に主イエスは、「あなたの神である主を拝み、ただ主に仕えよ」(8節)と言ってきっぱりとサタンの誘惑を退け、この世において人間の罪を担い、十字架の死を全うする「苦難のメシア」として生きる決意をいよいよ固くしたのです。
牧師 柏木英雄