先週の説教より
「宿屋には彼らの泊まる場所がなかった」ルカによる福音書2章1-7節(12/25説教)
神は、小さな幼子の姿を取って人間の罪の現実のただ中においでくださいました。神ご自身が人間の現実の中に直接(ご自身を与え)関わってくださったという意味において、クリスマスの出来事は人類史上唯一無二の出来事なのです。神は、そのような慎ましい姿を取って人間の現実を共にしてくださることを通して、罪の中にある人間を救わんとしていてくださるのです。
ローマ皇帝による住民登録のためにマリアとヨセフはダビデの町ベツレヘムへの旅を余儀なくされました。身重のマリアにとってそれは過酷な旅でした。マリアの胎の命が危険にさらされる旅でした。そのような現実に直面してマリアとヨセフは信仰の危機にさらされました。「もし本当にマリアの胎の命が神によって与えられた命であるなら、どうして神はこのような厳しい試練をお与えになるのか」という神への疑いを抱く信仰の危機にさらされたのです。
しかし、まさにマリアの胎の命こそが、聖霊の働きを通してマリアとヨセフの信仰を助けたのです。「自分たちにこの幼子が与えられている限り、神は必ずこの幼子と共に自分たちを守り給う」という信仰によって、マリアとヨセフは守られ支えられたのです。この信仰によって二人は過酷な現実に耐え、無事、幼子誕生の実現に至ることができたのです。
幼子はベツレヘムの馬小屋の飼い葉桶の中に寝かされました。「宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである」(7節)と記されています。この貧しく、惨めな、締め出された現実こそ、主イエスの十字架を指し示す現実です。神の御子イエスは、その誕生の時から十字架の現実を担っていてくださったのです。そして御子イエスは、この十字架の現実を誠実に担い抜くことを通して復活の命を現わし、すべての人間の罪と救いの道を開いてくださったのです。
牧師 柏木英雄