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先週の説教より

「愛は多くの罪を覆う」ペトロの手紙(一)4章7-11節(3/26説教)

 7節に「万物の終わりが迫っています」とあります。これはこの世の現実を見て言っている現実認識ではなく、主キリストにおける神の救いの働きを見て語っている信仰認識です。この認識を最も的確に言い表している聖書の言葉がローマ13章12節「夜は更け、日は近づいた」でしょう。「夜が更ける」とは、人間の罪が最も深まった真夜中の出来事としての主イエスの十字架の出来事を指しています。「日は近づいた」とは、主イエスの復活と聖霊降臨日(ペンテコステ)の出来事を指して言っているのです。つまり、主イエスはこれらの出来事を通して聖霊による救いの働きを始め、その働きは今や完成(夜明け)を目指して進んでいると言うのです。この主イエスの救いの働きを念頭に置いて「万物の終わりが迫っている」という信仰の認識が語られているのです。

 ところで信仰の認識とは、信仰によって「心の目が開かれる」ことによって隠された事実(主イエスの救いの働き)を「事実」として認識することを意味します。そうであるなら、「万物の終わりが迫っている」という事実は、ひとり信仰者のみに当てはまることではなく、すべての人間(万人)に当てはまる事実なのです。それなら、すべての人が万物の終わりに備えることが求められているのです。

 その備えとして8節「心を込めて愛し合う」ことが求められ、「愛は多くの罪を覆う」と言われているのです。「罪を覆う」とは罪を「覆い隠す」ことです。罪がなくなるわけではないのです。罪を見ないようにするのです。そして共にキリストの救いを仰ぐのです。キリストご自身が罪を取り除いてくださるのですから。「多くの罪を覆う」愛に生きることは、キリストの真実の愛(救い)に生かされた者(信仰者)がなすべき最大の愛の実践なのです。そしてそれが、万物の終わりに対する最善の備えである、と言うのです。

牧師 柏木英雄