先週の説教より
「五千人に食べ物を与える」 マルコによる福音書6章30-44節
主イエスは福音宣教から帰って来た弟子たちに「人里離れた所へ行って、しばらく休む」(31節)ことを勧められました。これは単なる休息のためではなく、「魂の霊的休息」のためでした。福音宣教の感動から弟子たちが自分の力を過信したり、心の高ぶりを抱くという不信仰に陥らないよう信仰の原点に立ち帰るという主イエスの配慮からでした。しかし、実際にはそこにも多くの人が押し寄せ、弟子たちは十分な休息を取ることができませんでした。このことが、その後の弟子たちの不信仰となって結果として現われたのです。
主イエスが弟子たちの休息の場にも押し寄せて来た人々を深く憐れみ、熱心に人々に御言葉を宣べておられる間に、夕闇が迫って来ました。弟子たちはそのことに不安を覚えたのです。五千人以上もの人がこんな人里離れた所にいて、このまま暗くなったらどうなるだろうと心配したのです。そこで、弟子たちは「人々を解散させてください。そうすれば~」(35節)と主イエスに進言したのです。確かに弟子たちの判断は人間的には正しかったのです。しかし、主イエスはそのことを承知で御言葉を宣べておられたのであり、人々も主イエスに信頼してそこに留まっていたのです。弟子たちだけがそのことを心配したのです。ここに弟子たちの不信仰がありました。弟子たちは「主が共にいてくださる」信仰の事実に堅く立つことができなかったのです。
その弟子たちに主イエスは「あなたがたが彼らに食べ物を与えなさい」(37節)と言われました。「主が共にいてくださる」信仰の原点に立って、主の助けの中で人々に食べ物を与えなさい、と言われたのです。弟子たちは「五つのパンと二匹の魚」で五千人以上の人を食べさせるという恵みの奇跡を経験することを通して改めて「主と共にある」恵みの偉大さを教えられたのです。
牧師 柏木英雄