先週の説教より

「あなたの信仰があなたを救った」 マルコによる福音書10章46－52節（1/31説教）

　主イエスの一行がエリコの町を出て行こうとした時、道端で物乞いをしていた一人の盲人バルティマイが「ダビデの子イエスよ、わたしを憐れんでください」と叫び出したのです（47節）。彼は、道端で物乞いをする惨めな生活の中で主イエスのことを聞き、深く思いめぐらし、主イエスが旧約聖書の中でダビデの子孫から出ると約束されたメシアであると心から信じたのです。そして彼はエリコの町で起こったザアカイの回心のことも知っていたのではないでしょうか。心頑なで問題児であったザアカイが主イエスの真実の愛に触れ、一瞬のうちに心優しい人間に生まれ変わった出来事を知り、自分も主の恵みに与って新しく生きる者になりたいと切に願ったのです。

　多くの人々が彼を叱りつけ黙らせようとした時、彼はますます『ダビデの子よ、わたしを憐れんでください』と叫び続けたのです（48節）。どんなに人々から制せられても（その中には弟子たちもいたかもしれません！）彼は叫ぶことをやめなかったのです。それは、彼が自分のような小さな者にも関わらずというのではなく、自分のような小さな者（主の兄弟である「最も小さな者」マタイ25章40節）をこそ憐れんでくださる恵み深いお方であることを心から信じたからです。

　主イエスはここに彼の「信仰」を見て、「あなたの信仰があなたを救った」（52節）と言い、豊かな癒しを与えてくださったのです。エルサレムでの十字架の死を真近かに控えた主イエスにとって、この全身で主の憐みにより頼む信仰こそ最も喜ばしいものであり、すべての人に（弟子たちにも！）期待し求めていたものだったからです。それ故に、この世では取るに足りない無名の名（バルティマイ）が神の救済の歴史の中では永遠に尊い名として刻まれているのです。

牧師　柏木英雄